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癒縄 命羅のロープヒーリング

緊縛~癒しの力と美しさを求める人へ

 存在証明1

かねてからアップしようと思っていた小説をアップしていきます。
「存在証明」
第一話

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最終話はこちら



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何かで何時だったか読んだのだと思います。奉仕の魂を掲げて敬語でセックス。厳密には私と京様の間にはセックスは存在しないのです。ただし敬語と奉仕は存在しています。私は、恐ろしい程、京様の虜。京様の小指の先が私の鼻の穴にほんの少し入るだけで、私はおそらく達してしまうのです。私は恐ろしい程、京様の虜。
私は現役のモデルです。ゴシックと呼ばれるファッションの専門誌の専属モデルなのです。二十三歳がそのファッション誌のモデルの適正年齢かどうかは別にして、ほぼ毎月、表紙を飾らせていただいています。白めのファンデーション、コンシーラー、黒いルージュ、紫と黒のアイメイクをして、あり得ない長さの付け睫毛。黒のゴシックワンピース。白いニーソックスと皺ひとつない黒い光を集めたようなヒール。高さは十三センチ。エッジソールなので、つま先だけに負担が掛かるわけでありません。身長は一六八センチ。人工着色された青い薔薇を胸の前で持ち、表紙で澄ましています。それが、きっと私の三分の一の本当。
今は、全裸に黒い首輪。品川駅を見下ろすタワー型のホテルの高層階の一部屋で、私はゴージャスなソファーの前で跪いて必死に口を動かしています。正確には口全体と舌、それから頭全体と首、そして両手を最大の努力で動かしているのです。口の中のものは、それを触らせて頂くと想像するだけで気絶するほど大切で愛おしいもの。黒いスーツのファスナーから出していただいて、頬ばる事を赦された殆ど人生最大の宝物。京様の汗の香り、程よく蒸れた感じのする性的な芳香、上の方で煙草の香り、小説の次のページをめくる音。その状況を再認識した今、それだけで気がふれそうになるのです。私は、モデル。スカウトもナンパも告白もそれなりにされる事が多いのです。男だってある程度は選べるはずです。でも私は自分だけが全裸になり、スーツを脱ぎもしない京様の股間に顔を埋めて汗だくになってご奉仕させていただいているのです。もう二時間近くはこうしている様な気がします。幸せ。惨めで、尊くて、妖しくて、淫乱であり、歓喜と呼べるものであり、そして地の底で天でもあるのです。私がこんなにしても京様は平気な顔でピンボールを探す小説を読んでいる。先ほど迄はブーメランの得意な青年や虫好きの人が出てくる小説を読んでいらっしゃいました。私のアエギや震え、嗚咽、餌づき、それに伴う鼻水、涙、涎、胃液などに一切かまわないのです。私の背中にも、ウエストにも、ヒップにも脚にも興味を示して下さらない。

 歓喜

それ以外の何をもってこれを表現しましょうか。私ごときが京様を興奮させる事など不可能なのです。私は性のはけ口にすら成れないただの出来損ないのマッサージ器なのだと思います。きっと、どんな男に誘われるより、どんな食事を楽しくするより、誰とロマンチックな会話をするよりも今、私は幸せだと感じているのです。私は京様にとって一番必要の無い小道具として、この世に存在を許されています。喉の奥に入れすぎて、また呼吸がつまって、吐き気がして胃から何かが昇ってきて口の中で粘りまくります。京様のものにからまってしまって申し訳ないと思っています。とにかく、鼻水と涙と涎と胃液だらけの私の稚拙な口技で京様の今がリラックスした時間であることが嬉しいのです。

{私は小道具だ。一番必要のない、小道具なのだ。もし許しがいただけるのなら、京様のおみ足をソックスの上から舐めてしまいたい。いいえ、靴を履いていただいて、靴の裏から、表、靴紐すら舐めさせていただきたい。京様が歩いた地面の味を知りたい。公園の土の味や、ビルの床の味、バスの椅子の下辺りの味、もしかして、京様が踏んだ公衆トイレの味。}

{愚かだ。そんな事を考えるから、また勝手に私は達してしまう。}

私は私が気づく間もなく大きく震えたのでしょう。京様がほんの少し笑って下さった、そんな声がしました。さっき二回目のアラームがなったので私は二時間丁度、京様にご奉仕させていただいています。けれども京様は一度も出してくださらないのです。殆ど私の命と引き替えにしてもいいくらいの、京様の大切な真珠色の蜜は今日も頂けないのかもしれないのです。もらえませんか、もらえませんか、もらえませんか、もらえませんか、京様、京様の蜜を頂けませんか。貴方様の奴隷にすらしてもらえない私にせめて、飲ませて頂けませんか。この価値などない、唯の雌である私に、いいえ、生き物ですらない小道具である私に、公衆トイレの便器にご聖水をなさる時のように、その先から、真珠のような蜜を、お情けで下さいませんか。私はその為に、その何CCかの為に何でもいたします。ご命令があれば、ビルの谷間での自らの慰めを晒します。勿論、ご命令を拒んだりもしません、お願いです。京様。京様。京様。おかしくなります。せめて、何か、ください。何かください。髪の毛一本でも、視線でも、何かください。私、何もなければ、勝手に自虐の渦で溺れ死んでしまいます。あ、もう、何をのぞんでいたかすら分からなくなってしまいます。京様なにかください。

「明日、三つ命令をこなせたら、飼ってあげるよ。 ナクは舌が良く動くね。偉いぞ。」

京様の恐ろしさはこれだと思います。命令等とは受け取れないような、そして恐怖とはほど遠い、優しい言いつけや、微笑みで、女が物へとかわってしまうのです。とにかく、私はその言葉を頂けました。期待以上のとても信じられないプレゼント。三つ命令をこなしたら、私は京様の飼い猫になれるのです。私は自分でも身体全体が大きく震え、揺れ、揺らめき、そして横に倒れそうになり、京様から口が離れて、唾液があまりにもいやらしく糸を引くのを見ました。そしてその後の記憶は一時間程欠落したのです。
ベッドにいつの間にか運ばれていた私は、京様が私の顔をつぶしたり歪めたりしながら楽しんでくれている時に意識を取り戻しました。京様はベッドサイドから赤ワインのオーパスワンというボトルをとって、ご自分の口に含み、私の口へ運んで、流し込んでくださいました。そして、それだけで気の遠くなるような、信じられないほど優しいキスをくださいました。深夜三時をナイトテーブルのデジタル時計が表示していました。





        「存在証明」






京様がどんなお仕事をしているのか、私は知らないのです。京様が厳密にはお幾つなのかも知らないのです。雰囲気では四十代半ばくらいでしょうか。京様がどんな時、お時間があるのかも把握していません。ただ、土曜日と日曜日は比較的お休みが多いような気がするのです。京様はどこにでもいる普通の中年に見える時もあります。特に太っても痩せてもなく、凄いハンサムでもなく不細工でもないのです。背も高くも低くもなく、私より五センチくらい高いでしょうか。ヒールを履くと、私の方が背が高いようです。京様はいつもお財布に福沢諭吉が沢山入っていらっしゃいます。ちらっと見るといつも五十枚くらいは入っていると思われます。カードは使わないらしいのです。とにかく私には詳しい事は分かりません。ただ、いつも行っていたSMのバーで会ってちょっとだけ縛られて、話をして、お酒を飲んで。そうしているうちに、私は気が狂う程、京様を好きになっていたのですから。
SMバーは、裸になったり、エッチな事をするところではないのです。少なくとも私が通った「楽園」という名のそのバーは縄の美しさや鞭の音を楽しむ高貴な人達が、大人の夜を静かに楽しむ店。全部脱ごうなどとすれば、完全に注意されると私は思います。細身の男性マネージャーの鋼さんが気さくに、しかし行き届いたサービスを提供してくれる素敵なバー。そこで、初めて京様にあったのでした。今でも思い出します。


京様は仕事帰りだったのでしょうか、黒めのスーツにブルーのワイシャツ、レジメンタルの蒼系のネクタイという姿で店にいらっしゃっいました。八月の盛夏の時期、暑かったけど、上着も着たまま涼しげな顔をしておられました。京様は私と同じく、カウンターの席に座られました。私が一番奥で、京様は入口から三番目。バーボンの水割りをご注文なさっていました。手前側にお座りだった有名な縄師の嵐さんと大変仲が良さそうにお話していらっしゃいました。私はその日、他のSMバーのスタッフでもある、珊瑚さんに連れて来て頂いていたので、珊瑚さんに京様の事をお聞きしました。

「今、嵐さんと話している、渋い感じの人、知っていますか?」

珊瑚さんも全国的に知られた人なので嵐さんは勿論、色々な方とお知り合いです。なので当然、知っておられました。

「ああ、京さんだね。うちの店にも結構来ているけど、会ったことなかったっけ。」

「はい。多分、会ったことは無かったと。」

私はなんだか、珊瑚さんに京様の事を聞いたことを後悔していました。珊瑚さんの目に京様の事が気になる私が映っていたからです。

「京さんは、いい男だよ。男連中で京さんの事悪く言う人、多分一人も知らない。縄もいいしね。たまにシアターブルーやGX歌舞伎座なんかのSMショー週間のときに出ているよ。いいショーするよ。いい衣装。とか言ってみた。ククク。」

珊瑚さんはたまに、恐るべきオヤジギャグをおっしゃることがあります。ギャグは無視させていただいて会話をしました。

「え、知りませんでした。結構、フライヤーとかはチェックしていますけど。」

「ああ、ステージの時は芸名らしきもの使っているんだよね。」
「そうですか、じゃあ、彼女さんとか、ペットさんとか、パートナーさんとか、いらっしゃるんですよね?」

珊瑚さんは少し苦笑いして、急に立ち上がって私の手をとって、カウンターの端から端へ移動しました。つまり、カウンターの一番手前側に私を座らせて、京様の横に自分が座られました。これでカウンターは入り口側から、私、珊瑚さん、京様、嵐さんという風になりました。ちなみに嵐さんの横にはその日、大阪の本店からオーナーさんがお客様として来店していて、つまり、お客様達からはキングと呼ばれている大物が座っていらっしゃったのです。その横には自分を吊って空中でパフォーマンスをすることで世界的に有名な蝶々嬢がいました。私以外は全員大物。そんな中で、珊瑚さんはふつうに私を京様に紹介なさいました。

「やあ、京さん。三日ぶり。」

「ああ、珊瑚さん、どうも。」

京様は声が渋くて、私は声だけでゾクゾクしました。

「この娘、うちや楽園にたまに来ているんだけど、ナクちゃんっていうんだ。会ったことない?」

京様は私を三秒ほど見つめて下さいました。

「珊瑚さんのところの浴衣ナイトのイベントに来ていたよね。」

私は気が付きませんでしたが、京様は私を知っていてくださいまいした。自分が覚えていなかった事に対して気まずい感じがしましたが、見て記憶に残して頂いていた事がとても嬉しくもありました。

「え、そうです。行っていました。ただ、凄く短い時間しかいられなくて、他のお客さん達の事、覚えていませんでした。」

京様は目で笑ってくれて、全然気にしてない事を表してくれました。珊瑚さんは私の方をみて微笑んでくれました。フォロー付き。

「あの日、僕のショーの練習台でナクちゃんに来てもらってましたんで。本当のモデルさんが、あの日こられなくて、一番体型の近いナクちゃんに頼んでいたんですよ。風邪ひいていたのに無理して来てくれたんだよね。」

「いえいえ、珊瑚さんに縛ってもらえる大切な機会だったので。」

私は、気持ち的には本当の事を言いました、失敗しました。これでは私が珊瑚さんにお熱みたいに聞こえます。実際、珊瑚さんはモテますし、この世界の実力のある人は必ず素敵な女性をつれていますし、引く手数多で、女性に不自由とかしない人がほとんどです。だから、私が珊瑚さんのファンであったり、パートナーにして欲しいと思っていても何も不思議はないのです。誰から見ても。

「いや、友達ですよ。いつも練習では世話になっちゃって。」

珊瑚さんのフォローは完璧でした。そして、私はその日、京様を含め五人の大物と楽しく話をさせていただいて、かつてない満足感をもって家に帰りました。朝六時、取り合えず日曜日なので何とかなりました。



 特に予定も仕事も入っていない日曜日は、ゆっくり寝ることにしています。だから、お昼頃、珊瑚さんから電話をいただいた時は、まだ寝ぼけていたのです。でも、僅かの時間で、自分がシャッキリ目覚めたのがわかりました。こう言われましたから。

「京さんと、今日、教会にいきょうかい?」

「・・・・・・・えーと、京さんと今日、教会に行くんですか?」

「・・・・・・・いや、笑うところでしょう。っていうか、教会にはいかないけど、夕方、ご飯食べに行くんだけど、ナクちゃんも行くかい?」

「あ、行きます行きます。おごりですか?」

 電話の向こうで珊瑚さんが、クスクス笑ってらっしゃる感じがした。

「うん。きっと京さんか、俺か、公爵が出すから安心してきていいいよ。」

 公爵さんは、結構お金持ちだと聞いた事がありました。それになにより、その縛りの素晴らしさで全国に名が轟いていらっしゃいます。いずれにしても、私は行くことにした。

「叙々の新宿店で焼き肉だけどいいかな?」

 それは、良いに決まっています。焼き肉が脂っこくて嫌いだなどと言えるほど私は成熟していないし、遠慮深くもないです。第一、私は安定していません。自分の中の自分と話す時は素直な言葉で話す。ですが、第三者に対して思うことは大抵敬語で思ってしまたり、感じてしまいます。本来の理性の自分と、野生の自分が内在し、争っているかのよう。とにかく、今は焼肉に対する野生が目覚めています。それも実際の言葉として外に出る時、つまり発音すると敬語一辺倒。

「最高です。珊瑚さん。お肉、大好きです。カルビ、らぶです。」

 携帯の向こうで珊瑚さんがクスクス笑ってらっしゃるのを感じました。

「何時に何処に行けばよろしいですか。」

「うん。じゃあ、新宿区役所の横のカプセルホテルのビルわかるかな。そう、あそこ。そこの前で六時でいいかな。」

 私が考えた事は、急いでシャワーに入ること。アンダーヘアーを極力剃って細めのゾーンにまとめること。下着のチョイスを真剣に考える事。脇のケア。着ていく服、あ、焼き肉の香り対策。息の匂い対策。焼き肉は考えてみれば、京様と話す時に後々マイナス材料が多かったと気付きます。それから、最低限の手持ちのお金。やることが満載でした。



 焼肉を美味しくいただき、私はみんなについて珊瑚さんのバーに行くことにしました。珊瑚さんとヨリさんというS女性がやっているバーは、「愛」とかいてラブと読む店で、新宿にあります。区役所のすぐ横でこじんまりとした、和装のバーでとても落ち着くお店なのです。縛った後、空中に浮かせる、いわゆる吊りのための設備もあり、楽しく過ごせる所です。鋼さん、キング様の「楽園」もそうですが、この手のSMバーには吊り床と呼ばれるその吊りの為の設備がたいていあるのです。鞭や縄、蝋燭なんかも、基本的にお店に常備しています。これは、スタッフが使う為の物ではありません。遊びに来たお客さんが、互いに縛られたり、SMの技術や心を体験したり、楽しんだりするためにおいてあるものといえます。多くの店は着衣が基本で、世間でいわれる風俗店とは全然違いますし、SMクラブでもないのです。基本は飲んで楽しく話す所なのです。例えば、縛られる、吊られると言っても、全裸になるなどありえません。水着やコスプレの衣装、セクシーなワンピースなど、お店の常備品に着替えて望む事が一般的です。女性の場合、縛られる時にパンツとブラだけになる事はあるようですが、それ以上はまず脱ぎません。あくまでも、気持ちを楽しむ。そういう店が本当のSMバーと言えると、私は思っています。
 もっとも、東京都内は地方都市とちがって、もっと自由な、ハプニングバーと呼ばれる共通の趣味の人たちが、自由意志でエロスを楽しめるワンダーランド的なお店の方が多いかもしれません。これは客層の広さと経営の問題で、店舗が大きくなれば、家賃のペイの基準から考えても、より幅広い客層を取り込むための手段といえるのでしょう。ですが、多くのハプニングバー、つまりハプバーにも吊り床や縄や鞭などは常備されてますし、コスチュームなどはその手の店の方が充実している場合が多い様です。「愛」は歴然とSMバー。私の行き着けの店でもあります。
 店に入ると、ママのヨリさんが優しく迎えてくれて、とても落ち着きます。日曜のこの店は程良くすいている事が多いです。公爵と珊瑚さんがバーボンの水割りを頼み、私がレモンサワー。京様は薄めのスコッチを注文してそれぞれがゆっくり飲み始めました。これもSMバーではよくある事、縛り手も縛られ手もたくさんはお酒を飲みません。縛られる方は、たくさん飲むと血管が拡張し、血行が良くなりますが、その状態で長時間縛られたり、吊られたりすると拡張した血管が締められて苦しくなったり、具合が悪くなったりする事がありますので。宙に浮いている状態で吐き気がしたり、過度の貧血になったりしたら、色々面倒な事に。縛られて吊るされている場合、基本的な縛り、吊りなら上手な人なら五分以内で吊ったり下ろしたり出来ますが、そのレベルにある人の吊りは飾り縄と呼ばれる、人体と空間を綺麗に見せるための工夫が色々としてあることも多く、下ろして解くのに時間がかかる場合があります。つまり、緊急で下ろすとしても下ろした時には既に酔いがまわり嘔吐しているなどありえます。
 一方、縛り手の方は酔っていると何かを見落とす可能性があるからだそうです。縛っているときの受け手の表情で、縄の絞まり具合を判断したり、手首より先の血行を触ってたしかめたり。止め縄の強さを見たり、吊りのバランスを計算したり、そういうことが一つでもおろそかになると、縛られる方に多くの負担がかかることになります。そういうものを見落とさず確実に安全に、かつ、きちんと締めて縛ってこそ世間で言うところの緊縛師というものの端くれになれるのだと、以前誰かに聞きました。そして私もそうだと思います。名の通った人に縛られたい人が沢山いるのは、安全とその緊縛師さんに縛られたというステータス、光栄、被虐感、陶酔、そのほか色々な感情がミックスされたものを、味わう事が出来るからだと推測します。そしてその中でも基本中の基本が、安全であると考えています。
 普通に彼氏とホテルにいって、ホームセンターや登山グッツの店で買ったロープで適当に縛られて、セックスして、その時間で手首に血行障害がおきたり、神経を圧迫して腕が上がらなくなったりとか、一時的にどこかが麻痺したりなど、本当は素人の場合、縛りを楽しむための知識に欠けているのだと思います。極めた人達はそれを知っているから、自分の事を極めたなどと思っていないし、縛ることに対して、慢心したりは絶対にしないそうです。だから、ハイペースでお酒を飲む場合は縛られたり、縛ったりしないのがこういうお店の常識でもあります。

 縛り手が預かっているのは命。縛られ手が預けているのは己の総て。

 札幌のある緊縛師さんがそう言っていた事を思い出す。その人は確か、めい様と言われる方で、素敵な事をおっしゃっていました。

「俺は、女性を物に変えていくSMが好き。人だった女性には悩みやストレスや憤慨、色々なマイナスの思いも詰まっているよね。それを浄化するんだよ。縛られて吊られて、自分ではどうしようもない状態。俺に総てを預けている。ブランコだったり、オルゴールだったり、自転車だったり、時には宝石だったりする。それはとても俺にとって大切な物だ。だから決して壊さない。内側にあるマイナスを忘れてもらうために痛みや、快楽、羞恥、または無機質をプレゼントする。ブランコの板は昼間の仕事の上司の悪いところを考えたりしない。オルゴールは痛みで声を出し続けている時に明日の家事の事を悩んだりしないし、脳内麻薬が痛み自体を快楽にかえたりする。自転車は吊られてくるくる回っている間、目が回ることだけを注意するから子育ての事を悩む暇なんかない。宝石は自分の美しさに気づいて自らの価値や居場所を見出すことができる。どれも一緒なんだよ。絶対的に総てを任せた人は、マイナスから解放される事が多々あるんだよね。」

 とか、そんな事を教えてくれたと思います。実体験として私にそうしてくれたのではのですが、きっとそうだと確信しました。だから私はそう風に自分をむき出しにしてくれる、飼い主を求めているのでしょう。
{探している。私は、どうしても、マゾだ。そこからは出て行く気もないし、出るように努力するものでもない。キスが好きな普通の女の子と同じ。SMが好きなのだ。心あるSMが。}


 珊瑚さんと公爵がカウンターでヨリさんとイベントの話をしにいったので、私と京様は奥のちゃぶ台の所で向かい合って二人になりました。気になる男性と二人になると私はうまく話題を選べない女なのです。京様が何か話しかけようとしてくださっているのに、唐突に質問してしまいました。

「京さんはどんなプレイが好きですか。」

 京様はお笑いになりました。はっきりとした素敵な笑い声でした。

「いや、ナクちゃんは面白い事訊くね。ははは、そうだな、女性を物に変えていく事が好きだな。」

 私の心臓が何秒か止まった、止まった様な気がしました。

「物にする。ですか。」

 私はもしかして真っ赤な顔をしていましたでしょうか。すでに女にしかない内臓器官が柔らかく収縮しているのを感じ、胸の先端が何かにつままれた様に自分から浮き出るのを実感しました。

「物っていっても、使い捨ての玩具ではないよ。大切な宝石や金で出来た便器や、なり続けるステレオなんかだよ。どれも宝物。」

 私は京様を見つめて話すことなど出来なくなっていた。だから首の付け根あたりに視線を合わせて精一杯普通に話しました。

「前に、札幌のバーで、めいさんという縄師さんに似た話を聞いた事があります。浄化するのだって、おっしゃっていました。」

「ああ、命の知り合いなの。俺、仲良しだよ。SM感がすごく一致する珍しいケースだったんで、二年くらい前に大阪の楽園本店で会った時に楽しくて、キングと三人でしこたま飲んだ。」

 そうおっしゃって京様はゆっくり一口だけお酒をお飲みになりました。

「わ、素敵な組み合わせ。」

私は、京様の笑顔とグラスを置いたときの右手の動き、指先の残像で自分の泉が湧きかえったのを知りました。そして、次の言葉に魂の真ん中をもっていかれたのです。

「SMはさ、ある種のセラピーなんだよ。俺達にとって。」

 もうだめでした。私はまるで家族に謝る出来損ないの長男のようにちゃぶ台に両手をついて、台に額を打ち付ける勢いで頭をさげてお願いしました。

「もし、おいやでなければ、一縛。イチバクしてもらえませんか。」

 京様は何もおっしゃらず、私のなかでは静寂の何十秒かが流れました。もしかして三秒くらいだったかもしれないのですけど。

「えーと、ナクちゃんは珊瑚さんのパートナーさんではないの。」

{確認していただけた。もし私が珊瑚さんのものならば、珊瑚さんの許可が必要になるから訊いていただいたのだ。可能性がある。私は京様に縛っていただける可能性があるのだ。}

「はい。特定のお相手、飼い主様、パートナー、いずれも今はいません。」

 私はまだ頭を上げる事ができませんでした。だって、顔が熱い。どれ程自分が紅潮した頬をしてるか想像に難しくないのです。京様はおっしゃってくださいました。

「はは。いいよ顔あげれば、そんな風に俺に頼む人いないよ。ふつうに縛ってくださいでいいじゃんね。」

 京様が立ち上がり、縄を取りにいき、私は縄床の下に移動して立って待つことにしました。立ち上がるとき、私は恥ずかしさに包まれてしまいました。私の泉からの女の匂いがスカートの中にこもっていました。それが立ち上がるときにフワッと私の鼻にまとわりついました。恥ずかしいにも程があります。京様に知られてしまう事は確実です。しかし、いまさら女の匂いがするので、恥ずかしくて縛っていただけませんなどと言えません。京様がこちらに戻っていらして、私の三メートル程前で立ち止まって、私を優しく見つめました。後ろで珊瑚さんと公爵もなんとなく京様の縛りを見ようと気楽にこっちを見ています。店内に客は私達の他に単独男性が一人とレズビアンのカップルが一組。吊るされる事などこの店では珍しくないですが、私にとっては大舞台な感じがしたのでした。京様は少しクールな感じになり、こうおっしゃいました。

「じゃあ、ナクちゃん。ゆっくり、本当にゆっくりとスカートを脱いでみようか。」

 別に縛るときに下着姿になることなどSMバーでは普通にある事です。これは服に麻縄のケバがついて服が汚れるのを防ぐためでもあります。それに服越しではなく直に縄を味わいたいM女さんが多いことからS男性側が配慮して言ってくれる事もあります。が、その日はなんだか飛び切り恥ずかしかったのでした。本当にゆっくり、、、、、、そこが。
 その日、私は厚めの黒いガーダーストッキング、レースの黒のガーダー、その上にシンプルな黒のパンティー。ブラも余計な飾りのないシンプルな黒。Bカップの胸は必死で寄せて上げて。膝上二十センチあたりまでのレースを何重にも重ねた黒のスカートの下にはパニエをはいていて、スカートはフワフワ。ブラウスも黒で丸襟の周りだけに、白のレースが飾りでついている。ブラックパールのイミテーションネックレスが胸元までかかっていました。でもすでに立ち上がった時に、はずしてありました。髪は肩甲骨の下くらいまでの長さでしたが、全部アップにして頭頂でまとめました。黒のレースのリボンと羽飾りお団子まとめ。ゴシックのモデルらしい私。ブランド名は今は思い出せないのですが。ナオトだったかベイビーだったか、とにかくそのジャンルです。

「は、はい。」

 声が震えました。自分でも驚くのです。でもゆっくりとスカートの左サイドに両手を伸ばし、ウエストのフックを外すのに三秒程かけました。

「早い。」

 京様が静かで、怒りでも慰めでもない冷静な声で注意してくださいました。だから、急いでとめなおして、もう一度。こんどは十秒心の中で数えながらフックをはずしました。次にファスナー。これはおそらく二十センチもないのですが、一分くらいかけてゆっくりさげてみました。 
 自分のマゾがどんどん目覚めているのを自分の思考する言葉で認識してきました。京様は何もおっしゃらずに見てくれています。私は、落ちかかるスカートと、それを支えるパニエを肘と手首の間で押さえていましたが、ゆっくりと、ウエスト部分を両手でつかみなおして、秒速一ミリくらいでしょうか、とにかく自分がじれる程の遅さでスカートとパニエを下げていきました。ブラウスの最下部までスカートが降りると、その下にわずかにパンティーの先端が見えるはずです。きっと私の水分でしなってしまっているでしょう。見られるのをはばかる女の部分の形がはっきりと分かる程、船底部分がはりついていたらどうしたらいいのでしょう。ただ、服を脱ぐだけで濡れてしまう淫乱だと思われるでしょうか。私は、なんだかきっと、私の匂いでお店を満たしてしまう様な気がして怖くなっていました。そしてそれが、恥ずかしさを煽り、もっと感じてしまっていました。やがて絶対領域と呼ばれる太ももから、膝上の部分があらわになり、私はお辞儀するように前かがみになり続けました。足首の手前までスカートを下ろしたとき京様が話しかけてくださいました。

「上手だね。和の世界の中にゴシックがあって、それを放棄していくところはとても美しいね。ナクちゃんは今とても綺麗だよ。」

 京様は褒めてくださいました。私は考えてみれば、この和風の空間で一つの異分子のような格好でした、それがナチュラルに戻っていく。京様はそれを作り出そうとして下さっていたのでした。私はそれを美しいと評してくれた京様の言葉に涙が出そうになり、そして震えていました。

「ブラウスは袖のボタンだけをはずして、中のブラだけ取ってごらん。」

 いわゆる女の子脱ぎです。後ろに手をまわしてブラウスの上からホックをはずし、肩に手をいれて左手の先からブラのストラップを抜き、最後に右手の袖からブラ全体をとりました。きっと、私の二つの先っぽが痛いほど自己主張しているのが見てとれたと思っています。

誰かが溜息をつきました。そのピンクの溜息は店じゅうを染め上げました。気がつかなかったのですが、その溜息は私の出したものだったそうです。

 京様がそのあとどうなさったのかは、覚えてないのですが、気がつくと私のすぐ目の前に立っておられました。手に割り箸二膳と輪ゴムをもってらっしゃいました。

「ナクちゃんの舌が見たいよ。思い切り突き出してごらん。」

 一も二もなく、私はこれ以上出せないというくらい舌をのばしました。割り箸の一膳は私の舌の上に、もう一膳は舌の下に。横向きに、まるで口へのつっかえ棒になるように両端に輪ゴムがとめられて、私の舌は口の前で伸びきったまま、固定されて戻れなくなりました。口から伸びた舌に馬につけるハミみたいなものがついたと思ってください。私はもう、上手に話す事も、返事をすることも、自分の涎を飲み込むことも出来なくなりました。京様はその割り箸に細い麻紐でアクリルの計量カップみたいな小さなコップをぶらさげて、私の涎がそこに溜まるようにしてしまいました。
 京様は次に私の両手を前でそろえさせて、手首をそろえて本結びという負担のかからない結び方で縛りました。麻縄は8mの長さがあり、それを半分におって使うのがメジャーですが、京様もそう使っていらっしゃいました。結んだ手首を頭の上に目いっぱいもちあげられました。縄尻を吊り床にあるカラビナという、登山などのときにカチャっとやるあれにとおして、私の手首の結んだときに出来たワッカにとおしてさらに滑車の原理で持ち上げます。私は直立で最高に両手を伸ばした状態で固定されました。
 京様は私の前にしゃがみおへその辺りを右手で強めに握ったり優しく押したりしました。そして、女とヘソのちょうど中間あたりに人差し指を立てて、何度か一定のリズムでつつきはじめました。

!初めての事です。京様は体の外側から私の女にしかない器官の中心をさぐられて、そこを震わせているのです。驚きと興奮と恥ずかしさがスクラムを組んだ巨人のように、そう、津波となって私を包みはじめました。そんな事で、逝きそうなのです。勝手に彼女が誤解しているのです。今、私は震える程気持ちがいいのだと。自分の器官である彼女の誤解は直接私の脳や身体全体に蟻が群がるように快楽を伝えきりました。声にならない声を叫んでいました。涎を振りまきながら、私は腰をくねらせて、内腿をすりあわせて、触って欲しくて欲しくて、全身が生殖を求める機械になったようにくねりました。そうだったらしいです。パンティーを乗り越えて泉の水は脚につたわり、ガーダーストッキングにつたわり、それが幾筋も踵へと線を描いていたそうです。私は京様に手の縄を解かれるとその場に座り込んでしまいました。そして、ここからが、本当に縛っていただく時なのです。
 町奉行の前に連れ出される時の縛り方、両腕を後ろで止められて胸の上下にそれぞれ四本とか六本とか縄がかかっているあの縛り方です。「高手後手」と言われるしばりですが、古典緊縛を基本に発展したこの縛りはもっとも多く使われるタイプであり、発展したものでもあります。テレビでみるあれよりも遥かに縄で飾られ、胸が強調され、そして、私の二つの突起が咲き誇っていることが丸わかりになるのです。座ったまま、縄をかけられるだけで、私はどこかの世界に旅立っていましたが、たまに京様が引き戻してくださいました。

「ナクちゃんのこのふくらみを最も優しく捻りあげるよ。」

 私は嬉しくて、涎をたらしながらでしたが、何度も頷きました。京様はブラウス越しにゆっくりと丸さを包み込み、やがて、両手でそれぞれ起立した小さな二つの先端をつまみました。そして、ねじあげられる衝撃。「優しく」、この単語がどこに言ったのかはわかりませんでしたが、おそらく時間の短さだったのでしょう。三秒とかそのくらいで放され、またやられてを何度か繰り返すうちに、私は自分で自分を支えることが不可能になっていました。ただ、この時はすでに高手後手に加えて背中に吊り床から支える縄が入っているので倒れたりしません。その私を京様は支え縄をつかって、一気に立ち姿勢までもどしてしまいました。つまり背中の縄で引っ張られてごく自然に立ち上がってようにも見えるということです。膝の七センチくらい上のところに縄がとめられて、右脚が吊り床に向けてもちあがりました。背中の固定された位置と膝上にかかった縄の位置が恐ろしい程同じ高さで止まったのをなんとなく覚えているような気がします。片足でたって右足を後ろにぴんと伸ばしたバレリーナを連想させます。もちろん、この時はそんな事を思う余裕はありません。そして残った左足も同じ様に簡単に持ち上がってしまいました。つまり、私は床を向いて、床と水平に地上から一メートル位の高さに宙吊りになりました。背中の支え縄と両膝上の吊り縄が綺麗に三角錐を描きまるでクリスマスツリーの上の方のようにまとまりました。両足を膝からまげて、上に向けて固定すると本当に三角錐になりました。下がった頭からは伸びた舌、舌からは絶え間なく糸をひいてだらしなく落ちる涎、涎をどんどん溜めていくアクリルのカップ。
 確かに、私はモデルでもなくなっていました。まるでブランコの板。板から落ちる雨の雫は口と女性自身から。雨のように周りを綺麗にするのではないのです。店を淫に染めて、紫の時まだ続きました。ブランコの板になった私はもう総てをめちゃくちゃにして欲しくて、でも言葉は口が使えないので話せなくて、気がフレそうになっていました。この水平吊り自体は基本的な吊りで、何度も珊瑚さんや他の縛れる方にしていただきましたが、これほど自分が飛んでしまうのは初めてでした。珊瑚さんが京様に鞭を何気なく渡したそうです。私はヒップに緩く当たる暖かい打撃を感じました。先が何本にも分かれている「バラ鞭」と呼ばれるものです。最初は当たり所を見るために軽くあたります。だんだんと強く、早くなります。力ではなく、スピードで打つ、、、そう言われています。音が大きくなりました。痛いというより熱いのです。衝撃が、当たり所からその周りにゆったり伝わる事によって血行が良くなるともいいますが、打ち手の技量がはっきりと出るアイテムでもあります。私は、何十回か打たれる間に、京様に好きにされている喜びがこみ上げて、女ではなく脳が射精しました。

「ちょっとオブジェしてなさい。」

 京様は私の口を割り箸から自由にすると私から離れて、カウンターで煙草を吸いにいかれました。私は涎に塗れた口元と局地的豪雨にあったパンティのまま、オブジェになりました。断っておきますが、これは吊られて飾られている幸せな光景です。SMバーでは特に珍しくもありません。トコノマにある壷にさして誰も注目しないように、飾られた私を凝視する人は店にはいません。慣れっこなのです。それでもこの日は、京様の出すオーラのせいなのか、店内にいる誰もが堂々と、またはチラチラと私を見ていました。縄の加減でゆっくりと左に旋回しましたが、ちょうど珊瑚さんや公爵のいるほうに広げられた股間が回ってしまい、私の泉の形にはりついたパンティーがはっきりと見えるかもしれないポジションで私は停止したらしいです。
 そこに興味を寄せるような男性は多分、この日は店にはいませんでしたが、それでも私の恥ずかしさは沸騰点を越えていたと感じます。京様は煙草を吸い終ると、奥の方からお店の一本鞭を持ってこられたようでした。これは先ほどのバラ鞭とは全然違って、ちゃんと打てば、本当に痛いのです。物によって、強さによって、皮膚がさけたり、蚯蚓腫れができたり、多くの痣を作ったりします。私は鞭は嫌いではありません。ただ、仕事に差し支えるような箇所に打たれるとグラビア的な撮影ができなくなるので、それを京様に伝えようとしました。が。

「仕事に差し支えの出ないように。ヒップだけを打つね。いいかい、本当に無理だと思ったら、いや、とかではなく、その口でもいえるような、英語でノーとかギブアップとか言うんだよ。それで、すぐやめるからね。」

 流石でした。そこまで、何も言わずとも配慮していただけました。多くの人が「いや」を見分けられません。その危険性を完全に排除して、かつ、鞭の当たり所を宣言していただいた事で、京様が私の生活の基盤を崩さないようにしてくださる、「安心して身を任せていい空間」を作り出す事を言い渡してくれたのでした。
 鞭の感じ方も色々あります。これはマゾ側からの発言ですが、痛さが本当に好きな人はそれ程いません。痛みを続けて与えられる事によって、それを脳内変換して気持ちよくなる人はいます。つまり痛みを連続でいただく事で、その苦しさから逃れるために脳内でこれを快楽に変換できるスイッチのある人がいるのです。ベーターエンドルフィンに代表されるように、脳内麻薬が多量に分泌されることによって性的快楽とは違う経路をたどって、地上から飛び立って達する事ができる、そういうマゾの方はそれなりにいます。または精神的な枷を外される事による開放感などでリフレッシュされる人もいます。本当に痛いので、それ以外の事がわからなくなる素敵な時間として、鞭の時間が存在する。そしてその自分を離れたところから自分自身で見つめて、哀れさや従属感、忠誠心の証明ができている事などで、喜びにあふれる人も多くいます。
 私はそのどちらでもありません。鞭には打ち所があります。人によりますが、私は尾骶骨の上、五センチ程のところに快楽点があります。ここは、打たれた後、何秒かでゆっくりと周りに暖かさが広がり、女だけの器官の奥の方に、何か震えるような人肌の波が襲います。つまり、打たれた後、次の打まで、三秒とか五秒とか一定のリズムをおいていただくことにより、性的にも気持ちが良くなるのです。勿論、被虐間や陶酔、従属感などは十分得られますので、それがプラスされる事は間違いありません。これは、上級の打ち手さんなら見分けられる事ですが、多くの上級の方は、相手のタイプにかかわらず、その3つの手法をミックスした打ち方をなさいます。事実、京様もそうでした。
 京様は最初は鞭先が私のヒップの双丘の真ん中。尾骶骨の少し上あたりに当たるように、鞭を振ってくださいました。しかも、音もするか、しないかの軽い感じでした。十秒間隔位でそれが繰り返されていたでしょうか。私はかえって焦れていました。本来のその鞭の使い方をしていただきたくて焦れていたのです。京様がどのように私を打ってくださるのか知りたくて、緩やかな時間が余計なものに思えてきたのです。今思えば、それは丸ごと京様の手の内で踊る事だったと分かります。そうです。つまり私は強く打って欲しくてしょうがなくなっていたのです。自分がマゾだとは知っていましたが、こういう風にじらされて、特に切望する分野でもない鞭打ちを求める。もっと強くと求める。確かに今思えば、京様の心理の読みの鋭で、私は完全にコントロールされていたのでしょう。精神状態をコントロールされる事。そして、そうされている状況に実際に自分がある事を認識する時。絶対的な嫌悪感か、圧倒的な倒錯感が芽生えたりします。私の場合はこの時点では勿論後者です。京様の頭脳の明晰さ、経験値の高さ、気遣いの細やかさ、優しさ。その総てが圧倒的な倒錯感につながり、この人に自由にされる心地よさという一般の方々には分かりにくい感情へと結びつくのです。
 とにかくその中、突然、その強打は私の右のヒップを襲いはじめました。一本鞭は打ち手の方にもよりますが、集中して一か所を責めることができます。私の右のその丘の頂点だけに鞭の先端が当たるように京様は打ちました。皮膚、そこから脂肪、そこから筋肉、そこから骨、そして腰のまわり全体へと衝撃が刻まれます。基本的には皮膚が痛いのですが、重さを感じさせる打ち方をすれば、内部まできちんと波は届くのです。その波が気持ちいいかどうかは、受け手側の個人差です。私は直接的に気持ちいいと感じる事はないのです。痛みに対して、素直に声が出てしまいます。妙に甲高い五十音の最初の文字を何度も叫んでしまっていました。その声を公爵や珊瑚さんが聞いていたと思うと、今でも顔が赤くなっていくのがわかります。つまりそれ程大きな声を出して、私は悶えていました。痛みではなく、脳内で何かがかわり、快楽の波が、ヒップからではなく頭と胸と女性だけの内臓から湧き上がってくるのです。鞭のリズムというか、その音と衝撃の強弱、突然の空白時間、それからまた強打、かと思えば暫くは優しい鞭。そして最後に嵐のような鞭が私を包み込んで、私は吊られたまま、深い海の底にゆっくりと沈んでいく人魚のように墜ちていけるのです。自分が達したのか、そうでないのかすら分からないのです。白い思考の中、無の想いの中、身体の機能が総てを安らぎの方に向けて、意識がブラックアウトしていきます。時には、ホワイトアウトしていきます。いつのまにか吊りから下ろされて、床に寝そべって縄をほどかれている私。そのタイミングでようやく目が開いて、はっきりしない感覚の中で、京様が見えました。私の胸の縄をほどいていらっしゃいまいした。私は口をあけましたが、うまく言葉を発する事ができませんでした。口の割り箸も取られ、京様に抱きかかえられていました。

「もう少し、ゆったりしていていいよ。」

 京様は、虚ろな目の私にそうおっしゃったと思います。私は再び目を閉じて、甘い気だるさの世界に総ての筋肉が侵されていくのを楽しみました。京様の腕の中で、膝の上で起き上がれたのは一〇分以上後だったときいています。私が初めて京様に縛って頂いた日はこうして心地よい気だるさの支配のまま終わっていきました。また大きく、京様に惹かれる私がいるのでした。

続く


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